動物と植物の一番大きな違いは、CO2を固定する側か逆に排出する側かということになるかとと思います。
植物の一番の特徴とも言うべき葉緑体の人工的な合成に成功した論文についてまとめてみました!
今回の記事は研究者の方向けです!(更にわかりやすい解説については後ほどアップします)
Light-powered CO2 fixation in a chloroplast mimic with natural and synthetic partsより

Light-powered CO2 fixation in a chloroplast mimic with natural and synthetic parts
Plant chloroplasts enclose two major photosynthetic processes: light reactions, which generate the energy carriers adenosine triphosphate and reduced nicotinami...
葉緑体の役割は光エネルギーによってCO2を固定すること
- 葉緑体は光を化学エネルギーに変えて、CO2を固定する
- 光合成により、光エネルギーを化学エネルギーを蓄えたATPとNADPHとして変換し、これらを用いてCO2固定することで有機物質を合成する
精製したチラコイド膜により、光からの化学エネルギー抽出に成功
- チラコイド膜がCO2固定のための化学エネルギーを供給する
- 筆者らはほうれん草の葉緑体からチラコイド膜を単離
- 単離したチラコイドは、光依存的にNADPH、ATPを産生
- チラコイド膜は、室温で2時間、On iceで24時間、-80度で1年以上元の活性を保持する (悪くはないですが、良くもないですよね。。。)
チラコイド膜とCO2固定化酵素を組み合わせて、CO2固定化に成功
- 筆者らは、CO2をNADPHによって固定するCcr酵素、ATPによって固定するPcc酵素を作成済み
- 単離したチラコイド膜がNADPHとATPを生み出すので、チラコイド膜とCcr、Pcc酵素を組み合わせることで、CO2の固定化に成功
チラコイド膜と代謝サイクルとを融合することで、CO2の固定化に成功
- 継続的なCO2の固定化を目指すため、すでに開発済みの代謝サイクル(CETCHサイクル:上記論文参照)を利用。
- このサイクルでは、チラコイド膜由来のNADPHとATPで代謝サイクルを回しCO2を固定化し最終的にグリオキシル酸へと変換
- 初期の試みでは、チラコイド膜とCETCHサイクルの組み合わせは失敗
原因1 チラコイド膜内の酵素が中間産物を加水分解してしまう
<ー 緑膿菌由来のクロトナーゼを加えることで解決
原因2 代謝サイクルが活性酸素を発生させ、チラコイド膜の機能を損なう
<ー 活性酸素を発生させていそうな酵素をPccという別の酵素へ置換
- 以上2つを解決することにより、継続的で光依存的なグリオキシル酸の合成に成功
実験系をドロップレットの系に移殖し、CO2を固定化する
- 実験システムを微小流路回路を用いた、ドロップレットに移植することに
- まずは、チラコイド膜を100um (300 pL)程度の細胞レベルの大きさのドロップレットに閉じ込め、NADPHが産生されてくることを確認
- ソルビトールの封入によりチラコイド膜の活性が増加することを発見 (個人的にはこのあたりが面白いです)
- チラコイド膜とCETCHサイクルに必要な酵素を詰め込むことで、90分で50 uMのグリオキシル酸の産生に成功
- 炭素固定効率は〜3.5%程度
まとめ
- 細胞サイズのドロップレットにチラコイド膜とCETCHサイクルの酵素とを閉じ込めることで葉緑体モドキの作成に成功
- (理論的には)光だけで継続的にCO2をグリオキシル酸へ変換することが可能
- 今後の課題は、チラコイド膜の人工合成 (チラコイド膜の精製には手間がかかるので)
個人的な感想
題名をひと目見て、「これはすごい!」と思いましたが、蓋を開けてみると大事なチラコイド膜についてはほうれん草から取ってきたということで少しガッカリしました。。。(もちろん、これはこれで十分すごいのですが)
チラコイド膜についても、人工合成できるようになるとすごいですよね!
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