「病は気から」は本当か?

depression motion生命科学関連

よく「病は気から」と言われますが、これは本当なのでしょうか? 

精神的な状態と免疫状態との関係を緻密に解析した論文について解析します!

脾臓が脳とつながっていることが、免疫応答に重要

spleen important for immunity

今回の論文では、脾臓という(マイナーな)臓器が重要です。

脾臓自体が免疫機能に重要であることがわかっています。ただ、特におとなになってからは、他の臓器に比べて脾臓の重要性はあまり高くありません。

研究者たちは脾臓と脳とを結んでいる神経を切断したときに、免疫機能にどのような影響があるかを調べてみました。その中で、脾臓の神経を切断することによって、免疫応答が弱くなることが明らかとなりました。

脾臓自体はのこっているため、脾臓そのものだけなく、脾臓と脳とを結ぶ神経も重要であることがわかります。

脳のごく一部が活性化することで、免疫応答が強化される

研究者たちが脾臓と脳のどこが接続しているか調べてみると、脳のごく一部の領域 (かなり中心に近い部分)が接続していることが判明しました。

次に、この領域が免疫機能とどのような関係があるのかを調べてみました。すると、この領域の神経細胞の機能を阻害すると免疫応答が弱くなり、逆に神経細胞の領域を活性化すると免疫応答が強くなることがわかりました!

つまり、この脳の領域が活性することによって、免疫応答が強化されることがわかります。

高いところで興奮状態になることで、免疫応答が強化される

excited

さらに研究者たちは、そのような脳の領域が活性化するような状況において、免疫応答にどのような影響があるかを調べました。

その脳の領域を活性化させるために、マウスを高い場所にしばらく置くという操作を行ったところ、なんとその操作によって免疫が活性化することが判明しました。つまり、マウスが高いところにいることで興奮し、脳の一部が活性化することで、免疫応答が活発になった、ということが示唆されます。(個人的に一番興味深いところです!)

逆に、このような高いところにいることによる免疫応答の活性化には、その脳の領域の神経細胞や脾臓の神経が必要なことも示されました。

精神的な高揚によって、免疫反応が強化される!

もう一度流れを整理しますと、

マウスが高いところにいることで興奮し、脳のごく一部が活性化する

その部分の活性化が神経を伝って、脾臓に伝わる

脾臓の中の免疫細胞が活性化する

ということになります。

もちろん、病気が精神論で治るわけでは決してないですが、精神的なケアや行動療法などが病気の治癒にも重要である可能性が示唆されました!

研究者向けのまとめ

脳の活動と獲得免疫との関連は示唆されていたが、明確なエビデンスはない

脾臓の神経を除くことで、T細胞依存的な免疫応答において、形質細胞の形成が損なわれる
脾臓の神経活動による形質細胞の活性化には、α9ニコチン受容体によってB細胞がアセチルコリンに反応することが必要
コリンアセチルトランスフェラーゼが発現しているT細胞は、ノルアドレナリン神経とアセチルコリン反応性B細胞の間をつなぐ

扁桃体と傍室核内のコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)を発現している神経細胞が脾臓と神経接続している
接続を物理的もしくは薬理学的に遮断すると、形質細胞の形成が損なる
逆に薬理学的な活性化により、形質細胞の形成が促進する

マウスを高所に立たせることにより、扁桃体・傍室核内の神経が活性化し、形質細胞の形成が促進される
逆に、扁桃体などの神経興奮、脾臓との神経接続、B細胞のα9ニコチン受容体のどれか一つでも欠けると、高所に立たせても、IgGの増加はみられない

脳ー脾臓の神経接続、ホルモンとの関係を明らかにしたことにより、行動療法により免疫反応を促進できる可能性を示した

参考文献

https://www.nature.com/articles/s41586-020-2235-7.pdf

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