【治療(候補)薬まとめ】新型コロナウイルス感染症の治験
【2020/5/7更新】

医学関連
from CDC, courtesy photo

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の治療について、治験の結果が明らかになりつつあります。せっかくなので、まとめてみることにしました!

(今後も更新していく予定です)
(仮に間違っているところなどありましたら、ご指摘ください!)

ワクチンの治験状況についてはこちらです!

治験中の候補薬

治療薬候補作用機序結果発表(予定)治験結果メモ
レムデシビル
(Remdesivir)
RNAアナログ
ウイルスのRNA合成を阻害
一部報告済み
2020年5・6月
やや効果あり
重症例に限ってFDAが認可
日本でも5/7に承認へ
クロロキン
or
ヒドロキシ
クロロキン
リソソーム阻害 
細胞内への侵入を阻害
報告済み
2020年6月に続報
毒性強くダメ?心毒性
ファビピラビル(アビガン)
(Favipiravir)
RNAアナログ
ウイルスのRNA合成を阻害
一部報告済み
2020年5月頃
効果薄い??催奇性
サリルマブ (ケブザラ)
(Sarilumab)
抗IL6抗体
免疫応答を抑制
一部報告済み
2020年6月に続報
最重症者には効果あり
トシリズマブ (アクテムラ)
Tocilizumab
抗IL6抗体
免疫応答を抑制
一部報告済み有効という<噂>
イベルメクチンウイルスの核への
侵入を阻害??
治験中コホートで有望な結果
ロピナビル
+リトナビル
(Lopinavir
+Ritonavir)
プロテアーゼ阻害剤2020年6月頃
メチルプレドニゾロン
(Methylprednisolone)
ステロイド
免疫応答を抑制
2020年6月
ナファモスタット (フサン)
nafamostat
プロテアーゼ阻害剤日本独自

太字の候補薬については、下に詳細があります!
ここからピックアップしています。

COVID-19 Treatment and Vaccine Tracker - Google Drive
15 drugs being tested to treat COVID-19 and how they would work
These 15 drugs are being tested to see if they can be repurposed to treat COVID-19

(私的な観点からの)まとめ

クロロキンは、毒性が強いため厳しい

レムデシビルは、毒性はあまり強くなさそうだが、切れ味もあまり良くない
重症例に限って、FDAが認可(2020/05/01)
日本でも、承認へ(2020/05/07)

ファビピラビル(アビガン)は、効果ははっきりしておらず、催奇性が問題に?

サリルマブ(ケブザラ)は最重症者には有効そう、メインの治療薬にはならない?

トシリズマブ (アクテムラ)は有効という<噂> (正式な報告はまだ)

イベルメクチンは有効かもしれない (正式な治験はまだ)

レムデシビル (Remdesivir)

概要

開発元: ギリアド・サイエンシズ (アメリカ)
既存の対象疾患: エボラ出血熱などRNAウイルス疾患

作用機序: RNAの一つであるアデノシンに類似した構造を持ち、RNA合成を阻害

判明している効果

第3相試験 (アメリカなどでシビアな患者対象)

Preliminary results indicate that patients who received remdesivir had a 31% faster time to recovery than those who received placebo (p<0.001). Specifically, the median time to recovery was 11 days for patients treated with remdesivir compared with 15 days for those who received placebo. Results also suggested a survival benefit, with a mortality rate of 8.0% for the group receiving remdesivir versus 11.6% for the placebo group (p=0.059).

https://www.niaid.nih.gov/news-events/nih-clinical-trial-shows-remdesivir-accelerates-recovery-advanced-covid-19

プラセボで15日間に対して、11日と、回復に要する期間が31%短縮

死亡率が、プラセボで11.6%から、レムデシビルにより8%に (有意差なし)。

治験 (中国)

Remdesivir use was not associated with a difference in time to clinical improvement (hazard ratio 1·23 [95% CI 0·87–1·75]).

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31022-9/fulltext

治療の改善に必要な期間にプラセボとレムデシビルでの差がない (プラセボ23日から、レムデシビルにより21日)

プラセボ13%から、14%と死亡率についても変化なし

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31022-9/fulltext

今後の治験予定

アメリカで中程度の患者を対象にした治験結果が、2020年5月頃に発表予定

(個人的な意見: もちろんエビデンスは弱いです)

アメリカの治験では高血圧や肥満率がかなり高いので、日本での結果とは異なる?

副作用は少なそうですが、パリッとした効果を望むのは難しい?

クロロキン/ヒドロキシクロロキン (Hydroxychlorquine)

概要

既存の対象疾患: マラリアなど

作用機序: エンドソームやリソソームのpHを上昇させることにより、ウイルスがエンドソームなどから脱出するのを防ぐ? (はっきりとした機序は不明)

判明している効果

中国での治験

The overall 28-day negative conversion rate was not different between SOC plus HCQ and SOC group (Kaplan-Meier estimates 85.4% versus 81.3%, P=0.341). … No different 28-day symptoms alleviation rate was observed between the two groups.

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.10.20060558v1.full.pdf+html

28日時点で、標準療法と標準療法+クロロキンで、症状の緩和率などに差がない

第2b相試験 (ブラジル)

The high dosage CQ arm presented more QTc>500ms (18.9%), and a trend toward higher lethality (39%) than the lower dosage. Fatality rate until day 13 was 27% (95%CI=17.9-38.2%), overlapping with the CI of historical data from similar patients not using CQ (95%CI=14.5-19.2%).

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.07.20056424v2.full.pdf+html

高用量のクロロキンで、QT延長やより高い死亡率が確認され、効果がないどころかむしろ毒性のほうが強い傾向

今後の予定

アメリカでの2つの治験が、2020年夏頃判明

個人的な意見

実際の実験でクロロキンを使った経験がありますが、HEK293Tなどのがん細胞ですらすぐに弱る印象です。(関係ないかもしれませんが)

とにかく、心毒性が強いので、実用化は厳しい?

ファビピラビル (Favipiravir); [アビガン(商品名)]

概要

開発元: 富山化学工業 (富士フィルム子会社)
既存の対象疾患: 新型インフルエンザ (既存の薬が効かない株に対して)

作用機序: RNAのアデニン、グアニンと類似した構造を持ち、RNA依存性RNA合成酵素の阻害をする (そのため、催奇性あり)

判明している効果

中国での小規模な治験

A shorter viral clearance time was found for the FPV arm versus the control arm (median (interquartile range, IQR), 4 (2.5–9) d versus 11 (8–13) d, P < 0.001). The FPV arm also showed significant improvement in chest imaging compared with the control arm, with an improvement rate of 91.43% versus 62.22% (P = 0.004).

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095809920300631

ウイルスの排出日数について、11日からファビピラビルにより4日へと明らかに短縮

肺の画像検査においても、改善率が向上

中国での中規模での治験

Clinical recovery rate of Day 7 does not significantly differ between Favipiravir group (71/116) and Arbidol group (62/120) (P=0.1396, difference of recovery rate: 0.0954; 95% CI: -0.0305 to 0.2213). Favipiravir led to shorter latencies to relief for both pyrexia (difference: 1.70 days, P<0.0001) and cough (difference: 1.75 days, P<0.0001).

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.17.20037432v4.full.pdf

臨床的な回復率での変化は観察されず

ファビピラビルにより、発熱や咳の改善が2日弱ほど早くなる

今後の予定

日本において、第3相試験が2020年3月にスタートしており、6月末には判明?

アメリカにおいて、第2相試験が2020年4月にスタート

個人的な意見

こちらも、明確な治療効果は未だに観察されず、また催奇性の問題から厳しい??

サリルマブ(Sarilumab) [商品名:ケブザラ]

概要

開発元: サノフィ (フランス)
対象疾患: 関節リウマチ

作用機序: IL-6抗体で、過剰な免疫応答由来のARDSなどを抑制する

判明している効果

第2/3相試験 (アメリカ)

In the preliminary Phase 2 analysis, Kevzara had no notable benefit on clinical outcomes when combining the “severe” and “critical” groups, versus placebo. However, there were negative trends for most outcomes in the “severe” group, while there were positive trends for all outcomes in the “critical” group (see table below).

https://www.sanofi.com/en/media-room/press-releases/2020/2020-04-27-12-58-00

「致死的な」グループのみでプラセボに比べポジティブな傾向。

プラセボ55%に比べ、200mgで46%、400mgで32%と、死亡または人工呼吸器状態の割合について改善傾向

今後の予定

国際的な第3相試験が、致死的な患者を対象に400mgで開始されていて、2020年6月に結果報告予定

個人的な意見

過剰な免疫応答が起きているのは致死的な患者であり、試験結果は妥当。
ただ、仮に良い結果になったとしても、メインの治療薬にはならない?

トシリズマブ (Tocilizumab) [商品名:アクテムラ]

概要

開発元: 中外製薬
対象疾患: 関節リウマチなど

作用機序: (ケブザラと同様に)IL-6抗体で、過剰な免疫応答由来のARDSなどを抑制する

判明している結果

A total of 129 patients were randomized: 65 to standard of care + tocilizumab and 64 to standard of care alone. A significantly lower proportion of patients reached the primary outcome in the tocilizumab arm. Results of this study will be submitted for publication in a peer-reviewed journal.

https://www.aphp.fr/contenu/tocilizumab-improves-significantly-clinical-outcomes-patients-moderate-or-severe-covid-19

アクテムラで良くなるということだが、正式な報告はジャーナル発表待ち

イベルメクチン

概要

対象疾患: 寄生虫感染症

作用機序: ウイルスがヒト細胞の核に侵入するのを防ぐため??

The FDA-approved drug ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro
Although several clinical trials are now underway to test possible therapies, the worldwide response to the COVID-19 outbreak has been largely limited to monito...

判明している結果

Results: The cohort (including 704 ivermectin treated and 704 controls) was derived from 169 hospitals across 3 continents with COVID-19 illness. The patients were matched for age, sex, race or ethnicity, comorbidities and a illness severity score (qSOFA). Of those requiring mechanical ventilation fewer patients died in the ivermectin group (7.3% versus 21.3%) and overall death rates were lower with ivermectin (1.4% versus 8.5%; HR 0.20 CI 95% 0.11-0.37, p<0.0001).

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3580524

<コホート研究>において、
人工呼吸器が必要な患者の死亡率 7.3% (vs 21.3%)
全体の死亡率 1.4% (vs 8.5%)
と、イベルメクチンにより死亡率が1/5〜1/3へ減少することが判明。

Usefulness of Ivermectin in COVID-19 Illness by Amit Patel :: SSRN
Importance: There is no established anti-viral therapy for treating COVID-19 illness.Objective: To study the usefulness of Ivermectin, an antimicrobial

今後の予定

今後、イベルメクチンの効果をRCTにて検証。
日本でも治験予定。

今回用いられているコホート研究は、エビデンスの強さ(研究の信頼性)で言えば中間です。
信頼性を高めるため、更にエビデンスの強い「RCT(ランダマイズ・クリニカル・トライアル)」という研究を行う必要があります。

個人的な意見

かなり有望な結果、RCTの結果が待たれる
いずれにせよ、なぜイベルメクチンが聞くのかその機序が謎。

治験の種類について

第1相試験: 薬の安全性と化学的な性質の検証。少人数。

第2相試験: 薬の安全性と有効性の検証。比較的少人数

第3相試験: 薬の有効性と安全性の検証。大規模 (数百人程度)。

(第4相試験): 販売後の薬の有効性と安全性の検証。

(数字については、IIIなどのローマ数字のほうが正式ですが、見にくいので算用数字を使っています)

このような3段階の治験を経て、第3層試験で安全性と有効性が検証されると、薬として販売されることが一般的です。

今回取り上げている薬については、そのほとんどはすでに他の病気での治療薬として使われており、薬の安全性についてはすでに検証済みなことがほとんどです。

そのため、新型コロナウイルス感染症に対する有効性を確認する第3相試験が現在行われています。

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