抗体はマラリアに対する新たな切り札となる!

生命科学関連

1年間で、マラリアは全世界でおおよそ2億人が感染し、そのうち45万人程度が死亡している恐ろしい病気です。

予防と治療が可能であるにも関わらず、発展途上国においては必要な措置を行うことができず、未だに多数の死者が出てしまっています。そのため、マラリアは別名「顧みられない病気」とも言われています。

そのようなマラリアに対して、新たな切り札となりうる研究結果が発表されましたので、解説してみます!

(研究者の方向けのまとめは下の方にあります!)

マラリアは蚊によって蔓延し、赤血球に住み着く

マラリアという病気の原因となるのは、「マラリア虫」というとても小さな寄生動物です。マラリア虫は体に侵入すると、酸素を運ぶ役割を赤血球の中に住み着きます。

血液の中の「警察官」としての役割を果たしている「白血球」は、細胞の外に存在するマラリア虫を排除することができます。一方で、赤血球に住み着いたマラリア虫を排除することは困難で、マラリアへの対処を難しくしています。

ちなみに、新型コロナウイルスで話題の「クロロキン」ですが、もともとはマラリアの治療薬として使われています。
赤血球に豊富に含まれる「ヘム」というタンパク質をマラリアが食べてしまうのを防ぐことで、マラリアを排除できると考えられています。

抗体は敵を認識する目印で、敵の排除に役立つ

新型コロナウイルスでも話題の「抗体」ですが、一言で表すと「抗体は外敵に対する目印」です。抗体はY字型をしており、その先端が外敵の形を見定めて特異的に結合することで、その敵を排除することができます。

マラリア虫は赤血球に住み着くので、抗体が標的にしにくい

「外敵」の存在なくして、その外敵に対する抗体が作られることはありません。敵に暴露されてはじめて、その構成因子をターゲットにする抗体が作られます。

抗体は白血球の仲間の細胞から作られて、血液中に存在しています。一方で、細胞の中には入ることができないので、抗体は細胞内に入り込んだ外敵を標的にすることは困難です。

マラリア虫は赤血球の中に住み着くので、マラリア虫自身が血液中などを漂っていることはめったにありません。そのため、抗体がマラリアを標的にしにくいという問題点があります。

マラリア虫のタンパク質に対する抗体をアフリカ人から発見

このような困難がありましたが、マラリアの危険にさらされているアフリカ人の血液から、マラリア虫のタンパク質を標的にする抗体を発見することに成功しました!

また、赤血球の表面に出てくるマラリア虫のタンパク質を標的にするという点がポイントです。

マラリア虫に寄生されてしまった赤血球を抗体は標的とできるので、赤血球ごとマラリアを排除することができます

逆に、抗体を持つヒトはたしかにマラリアに強い

逆に、タンザニアやケニアの子どもたちについて、その抗体を持っているか持っていないかで2グループに分けて解析を行いました。

すると、抗体を持っていない子供に比べて、抗体を持っている子供はマラリアにかかりにくい傾向にあることがわかりました。つまり、抗体が子どもたちをマラリアから守っていることが示唆されました。

ワクチンによって抗体ができるとサルが感染に強くなる

また、更にサルを使って、その抗体を作らせるようなワクチンの効果を調べました。

予想通り、そのようなワクチンによって、サルはマラリアにかかりにくくなることも判明しました。

このように、有効なワクチンを作ることが可能にもなりました!

まとめ

  • (通常はあまり有効ではないが)マラリアに有効な抗体を発見した
  • その抗体によって、マラリアにかかりにくなる
  • その抗体を作らせるようなワクチンについても、サルで検証済み

研究者向けのまとめ

  • 熱帯熱マラリア虫によるマラリアは致死的な病気であるが、効果的なワクチンはない
  • マラリアに脆弱な子供とマラリアに抵抗性を示す子供由来の血液に含まれる抗体がどのようなマラリア由来タンパク質を抗原とするのかを解析 (Biopanning experiment by Phage)
  • そのなかで、GARP(Glutamic-acid-rich protein)というタンパク質に注目
  • マラリア虫以外にこのタンパク質のホモログが確認されず、繰り返し配列が多様で、リシン・グルタミン酸・アスパラギン酸が50%をふくむような不思議なタンパク質
  • 赤血球に侵入後、GARPは赤血球表面に発現
  • マラリアにとっての、GARPの機能は不明 (KOしてもフェノタイプなし)
  • マウスにGARPリコンビナントタンパク質を接種し抗体を作らせると、その血清においてはマラリア虫の成長が大幅に抑えられることが判明
  • また、タンザニアの住人由来のGARP抗体によっても、マラリア虫の増殖を大幅に抑えられる
  • マラリア虫でGARPをKOしても、特にフェノタイプは出ない
  • GARP抗体は食小胞 (food vacuole)を壊すことで、細胞死を引き起こす
  • タンザニアの子供のコホートにおいてGARP抗体を持つ子供は2.5倍深刻なマラリア症状を呈するリスクが低く、ケニア人のコホートにおいてもGARP抗体を持つヒトはマラリア虫の密度がおおよそ半分程度になることがわかった
  • GARPのmRNAワクチンにより、サルがマラリア虫から優位に守られることから、免疫応答を引き起こすことが可能
  • GARP抗体は、他のワクチンと相乗効果を示すかもしれない

参考文献

Anti-PfGARP activates programmed cell death of parasites and reduces severe malaria
Antibodies against Plasmodium falciparum glutamic-acid-rich protein (PfGARP), an antigen expressed on the surface of infected red blood cells, kill P. falciparu...

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