【解説】心臓の超音波検査のAIによる診断: 0.05秒で専門医なみの正確性を達成

AI(人工知能)関連

私達の体にとって、心臓の機能は必要不可欠なものです。その心臓の機能を調べるために、心電図や聴診器などがありますが、中でも重要な診断技術として心臓エコー(超音波検査)が挙げられます。心臓エコーを用いて、様々な角度から心臓の動きをリアルタイムで確認することによって、心臓の機能を多方向から診察することが可能です。

心臓エコーは非常にパワフルなツールではありますが、静止画のX線写真、CT、そしてMRI等のデータと異なり、出てくる結果が「動画」になるので、じっくりと観察することが困難であり、正確に診断するには熟練した技術が必要になります。

そこで、研究者たちは、AI(機械学習)を用いて、心臓エコーの動画を診断する手法の開発に取り組みました。

心駆出率 (心臓が血液を送り出す効率の指標)に注目

心臓エコー検査における最も重要な指標の一つとして、心駆出率 (Ejecton fraction)が挙げられます。この値は、心臓がどのくらい効率よく動き全身へと血液を送り出しているかを示します。

例えば、心不全など心臓の機能が低下してしまうと、この心駆出率は低下します。そのような状況で手術を行うことはとても危険であるため、ほとんどの手術前にも心駆出率がチェックされます。このように、心駆出率はとても重要な指標です。

そこで研究者たちは、心臓エコーの動画から、AIを用いて心駆出率を算出することを試みました

AIは正確に心駆出率を算出し、更に心不全を見分けることができる

AIを用いた心駆出率の正確性を確かめるために、専門医が算出した心駆出率とAIが算出した心駆出率とを比較してみると、精度良く一致していました (一致度合いを示す相関係数で0.81; 1で完璧、0で全くだめ)。専門家同士の心駆出率のばらつきが14%ほどにもなることを考えると、専門家の平均とAIの誤差がおおよそ5%未満と、AIの診断が専門家なみに正確であることがわかりました。

また、心駆出率を元に心不全(心臓の機能不全状態)の診断を行わせたところ、やはりかなりの精度で診断可能であることがわかりました (精度の指標であるAUCで0.97; 1で完璧、0.5で全くだめ)。

このように、AIは専門医なみに正確に心駆出率を算出できることがわかりました。

また、同じ病院の心蔵エコー結果だけでなく、他の病院のエコー結果についても、同様に正確な診断ができました。

専門医よりも、AIはよりばらつきの少ない診断が可能

上にも記載したように、心臓エコーは動画なので、同じ日に同じ患者さんの心臓エコーであっても、どの瞬間に注目するかによって心駆出率の値がばらついてしまいます。もちろん、ばらつき(値の違い)が少ないほうが優秀といえます。

そこで、研究者たちは、同じ日に同じ患者さんの心臓エコーの結果を2つずつ用意して、専門家とAIに診断させて、心駆出率の値のばらつき度合いを比較しました。すると、従来の方法に則った専門家による測定では5%ほどの値がばらついてしまったのに対して、AIによる測定では2.6%しかばらつかないことがわかりました。2つの検査結果は、ばらつかない方が望ましいので、AIによる測定のほうがより正確でばらつきの少ない診断ができたといえます。

AIによる診断は、なんと0.05秒ほど!

正確性はもちろん大事ですが、実臨床分野であれば、その結果が出てくるまでのタイミングも重要になります。専門医であっても解析を完了するのに数分はかかるかと思いますが、今回のAIは0.05秒で結果を算出可能ということで、正確性だけでなく迅速性という観点からも臨床に貢献する可能性が期待されます。

ここまでAIができても、まだまだ人は必要

ここまでAIができてしまえば、人間の医師は必要無くなるのではないか、という話になってしまいそうですが、私はそれはまだまだ先の話だと思います。

例えば、心臓エコーでは、今回の駆出率の計算というよりは、「心臓エコーの(きれいな)画像を取ること自体」のほうが遥かに難しいです。というのも、心臓の周囲は肋骨などの骨が多いため、エコー装置を当てる場所によって「動画の綺麗さ」が変わってくるためにです。

すぐには難しいかもしれませんが、工学とも組み合わせて、「AIが心臓エコーの画像を取り、更に診断まで行える」という研究に期待したいです。(ここまでは言いすぎな気もしますが笑)

参考文献

Video-based AI for beat-to-beat assessment of cardiac function
A video-based deeplearning algorithm—EchoNet-Dynamic—accurately identifies subtle changes in ejection fraction and classifies heart failure with reduced ejectio...

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